東京高等裁判所 昭和43年(ラ)760号 決定
非訟事件手続法三七条によつて準用される同法一三七条によれば、法人の清算人選任の裁判に対して不服を申し立てることは許されない。同法第一編総則における二〇条の規定は、第二編以下の特別規定である前記法条によつておのずからその適用を制限されることが明らかである。
法人は、解散によつて積極的活動をすることができなくなり、権利能力を制限されるのであるから、法人が解散したか否かを終局的に確定することは、非訟裁判所の権限ではない。したがつて、右法人の清算人選任の裁判は法人の解散自体を確定する趣旨のものではなく、法人が解散したことを前提として清算人の欠けたため損害を生ずるおそれのあるとき必要に応じて清算人を選任する処分であると解するのが相当であつて、その前提たる法人の解散自体については、公開の法廷における対審および判決を受ける途が閉されているわけではない。解散していない法人については清算人を選任すべき法律関係が存在せず、清算人選任の裁判には法人を解散させる効力はないから、清算人を選任しても法律上清算人を形成する効果を生ずる余地がない。したがつて、かような清算人選任の裁判は無効である。もつとも、無効な選任であつても善意の第三者がこれによる公権的選任を有効と信じて表見清算人と取引をなした場合には後に至つてその選任の無効なことが判明しても解釈上その取引の効力を認むべき場合もないではないから、非訟裁判所は、自己のなした清算人選任が当然無効であると認めるときは、非訟事件手続法一九条一項によつて右選任を取り消すことができ、利害関係人は右取り消しの職権発動を促すことができる。しかし、清算人選任の裁判に対して抗告することは選任の不当を理由とする場合にかぎらず選任の当然無効を理由とする場合にも許されないことは事件処理の迅速をはかつた同法三七条・一三七条の規定になんらの例外事由を設けていないことに徴して明らかである。
(室伏 園部 森)